脳は全身の神経ネットワークのコントロールセンターですので
殆どすべての症状を診療する事になります。
(1)頭痛
脳神経外科の外来で一番多い症状で、後頭部痛、前頭部痛、こめかみ痛など様々です。最も大切なものは女性に多い片頭痛ですが、慢性頭痛になると日常生活に多大な支障を来たすため、予防的治療で改善させる必要があります。緊張型頭痛は頚椎に変形を認めることが多く、姿勢を矯正する体操で改善できます。現代のストレスにより起こることが多く、日常生活の改善も必要です。ときに脳腫瘍、脳出血、脳梗塞、頚椎症などが見つかり適切な治療で治すことが大切です。
(2)頭鳴・耳鳴り
頭鳴や耳嶋りは変形性頚椎症あるいは緊張型頭痛の随伴症状で、耳小骨の異常緊張に伴う状態が予想されます。頭部の検査では、異常がないことが多いのですが、時に多発性脳梗塞や聴神経腫度がMRI(磁気共鳴断層装置)で見つかることがあります。治療法は不確定ですが抗痙撃剤や鍼灸療法などが有効なことがあります。
(3)めまい・フラフラ感
めまい、フラフラ感は持続時間が1時間以内の軽症タイプと、24時間以上も続くメニエル病タイプの二つに大別されます。軽症タイプが圧倒的に多く、原因は現部椎間板ヘルニアなどによる頸部の自律神経障害です。 内耳の障害が原因で起こるメニエル病は適切に治療すれば治りますが、長時間に及ぶ場合は患者さんも気分が悪く大変につらい思いをします。時に小脳の脳梗塞や脳腫瘍のこともあり、吐き気などが強度で重篤なため早く治療を開始しなければなりません。
(4)ろれつ難・言語障害
ろれつの障害は、いつのまにか起こってくるものと、ある朝突然に起こってくるものがあります。言語障害はMRIでみると脳梗塞が多発性に起こっている際に見られる症状です。重症の脳梗茎になる前兆の事が多いので、なるべく早く治療を行わなければなりません。
(5)意識消失、失神発作
意識消失や失神発作は脳の障害で起こる事があります。てんかん発作や脳幹梗塞などが原因ですが、他に心臓の不整脈で起こることもあるので、検査で鑑別する必要があります。脳波や心電図、MRIなどで診断が出来ます。てんかん発作の患者さんでは血管の異常である脳動静脈奇形、モヤモヤ病や脳腫瘍が見つかることもあり、手術を要する事もあります。
(6)複視・視力障害
40歳を過ぎると、視力の衰えを覚えるものです。一番多い視力障害は白内障に因るものですが、眼が見えにくくて転びやすく認知症状のある人は後頭葉に脳梗塞のある事が多く更に、重症の脳梗塞になる前兆と考えられます。ものがだぶって二重に見えるのは乱視によることが多いのですが、時にクモ膜下出血の原因である脳動脈瘤や脊髄小脳変性症が見つかることがあります。脳動脈瘤もMRA(MRI血管撮影)で発見することができ、クモ膜下出血を起こさないように未然に治療することが出来ます。
(7)歩行障害・全身の筋力低下
全身の筋力は年齢とともに衰えていきます。歩行時に右や左に傾き、足腰が弱くなり、シビレ感を伴っていれば多発性の脳梗塞や骨組髭症に伴う脊椎の変形や椎間板ヘルニアなどの異常がMRIで見つかることがあります。いずれも早期に治療を開始すれば症状は改善することの多い疾患です。
(8)手足のふるえ
手足のふるえはパーキンソン病でよく見られる症状ですが、他に甲状腺機能亢進症や本態性振戦、書痙、ジストニアなどの病気もあります。MRI横査や血液検査などで鑑別しますが、適切な飲み薬やリハビリテーション、手術などを選択します。
(9)記銘力障害
記銘力は年齢とともに低下してくるのが普通ですが、当院では簡単な記銘力のテストやMRI検査をして、早期に病的な認知を発見することが出来ます。認知症は、アルツハイマー病、脳血管性認知、MCI(minimal cognitive impairment)、うつ病などに区別されます。病状によっては薬物療法や集団療法、理学療法などで改善することがあります。
(10)気分抑うつ、うつ状態、不眠
脳神経外科でうつ状態の人の診察をすると、ときに慢性硬膜下血腫や多発性脳梗塞などの器質的疾患が見つかることがあります。それぞれの原因治療を行えば、うつ状態が治ることもあります。不眠は現代人に特に多い症状ですが、入眠薬を服用すると劇的な改善がみられます。
(11)顔面のけいれん・痛み
よく顔面神経痛といわれている状態ですが、顔の片側が激しく痙攣したり、顔の片側が発作的に激痛を生じる病気です。正確には顔面けいれん、あるいは三叉神経痛と呼びます。これらは脳動脈硬化などで蛇行した脳内の血管が、顔面神経や三叉神経を圧迫するために起こっている症状です。まず原因を確定し、薬で治療しますが、それでも改善しない場合はボトックス注射や微小血管減圧手術で治すことができます。治療が奏功すれば、完全に治ることが多い病気です。
(12)脳ドック
脳の健康診断はMRIやエコーの検査を中心に脳実質や脳内の血管の検査などが施行されます。検診の精度は、かなり高く、脳の疾患である脳梗塞、脳動脈瘤、認知症などの予知や予防治療が可能になります。脳卒中などの家族歴がある方には特にお勧めです。脳ドック検査は痛みを伴わないのが特徴で、気軽に受診でき、約30分程度で検査を終了できます。