頭痛の症例を元にQ&A形式で情報を公開しています。
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交通事故にあったんですが、その後めまいや頭痛が続いています。
ヘビースモーカーの叔母さんが脳腫瘍で入院したとのことです。脳腫瘍とタバコは関係がありますか?
一月前に友人が酒を飲んで酔っぱらい転んで頭を強打しました。しばらくしてフラフラして頭痛があり病院に行ったら頭の血腫除去手術を受けたらしいです。どんな病気でしょうか?
最近若いミュージシャンが小脳梗塞になって入院したと聞きましたがどのような原因で起こるのでしょうか?若い人に起こりやすいのですか?
認知症になりやすい病気に水頭症があるとのことですが、どんな病気ですか?
30代の男性です。最近、首や肩が痛くて片方の手までしびれフラフラするようになりました。内科に行ったら自律神経失調症と言われましたが脳の異常は考えられないのでしょうか?
55才の主婦です。最近、右手が震えて何度も転ぶので整形外科を受診したらパーキンソン病ではないかと言われました。どのような病気でしょうか?
最近、友人がフラフラ感がひどくて転びやすいため病院を受診したところ脊髄小脳変性症と言われたようです。どのような病気でしょうか?
33歳男性会社員です。18歳前後から1~2年に1回、がまんできない頭痛に悩まされています。治療法がありますか?
69歳の母親が3年ほど前から瞼(マブタ)がピクピクして、そのうち開眼が困難になりました。病院で眼瞼けいれんという診断を受けたようです。この病気の治療法がありますか?
46歳の主婦です。昨年か首が勝手に横を向いてしまって正面を向きにくい状態が続いています。このために肩こりもひどくなり日常生活に困っています。脳の検査が必要でしょうか?
最近、定年間際の父(59才)に物忘れが多くなってきました.同じ事を何度も言い、夜中に捜し物をしたり短気で怒りっぽくて困っています。 認知症ではないかと心配しています。
アルツハイマー病の新薬が10年後に出ると聞きましたが、どのようなお薬でしょうか?
入社2年目の事務系OLです。週末になると頭痛が起こるためセデス やナロンエースを頻回に飲んでいますが最近効かなくなりました。 病院で頭痛の治療が出来るのでしょうか、受診した方が良いでしょうか?
最近、物が二重に見えるため脳神経外科を受診したら脳動脈瘤と診断されました。クリッピング手術を勧められていますが不安です。他に良い方法があったら教えてください
右の耳たぶの帯状疱疹のため右後頭部痛が続いて苦しんでいます。過去に何度か帯状疱疹の経験がありますが良い治療法はありませんか?
パーキンソン病の母が夜中に目が覚めてうなされてばかりで不眠状態です。最近症状も進んでいますが何か良い治療法がありませんか?
今年、小学校に上がる6歳の息子が朝から毎週のようにお腹や頭が痛いといって吐いてしまいます。脳の異常ではないかと心配ですが?
最近、有名人で脳梗塞などの脳卒中になる方が増えていますが予防することは出来ないのでしょうか?
昨年より顔がピクピクして、目が開けにくくなりました。病院で顔面けいれんと診断され手術を勧められていますが、他に治療法は無いでしょうか?
昨年暮れに交通事故に遭い、その半年くらい後から右手がしびれ、力が入らなくなって因っています。手が冷たくなり汗がたくさん出ることもあり家事が出来ないこともありますが、脳の検査が必要でしょうか?
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「外傷性頸部症候群(むち打ち症)」=首を急に捻られると筋肉や椎間板・末梢神経などの柔らかい組織の引きちぎられた所に出血が起こり、頚部痛が出現します。頚部痛や頭痛以外にも、めまいや耳鳴り・両手のシビレ感や、時として狭心症まがいの胸痛・倒れ発作などの症状が起こることもあります。症状は事故の直後から明らかなものが殆どですが、稀に1年以上も遅れて出現し、胸痛などのため救急車で運ばれる事もあります。また症状の長引くむち打ち症は、「気のせい」とか「うつ病」などと誤って診断されることもありますが、MRIで検査すると椎間板ヘルニアが見つかります。これは、痛みの楽な前屈み姿勢により、首の椎間板の変形が進行しているためです。レントゲンでは椎間板の変形は見過ごされていることがあり、6ヶ月毎のMRIでの頸部チェックと姿勢の矯正運動が必要です。
また、交通事故の患者さんは頭痛のために、枕が合わないことを相談されます。変形した頚部が脊髄を圧迫して頭痛になっているのです。しかし、むち打ち症の方は、枕よりも自分の首に責任があることが多く、枕に頼るよりも自分の首の変形や寝相を正すことが先決です。首の変形は、ストレッチ運動を中心とした首周りの筋肉トレーニングで改善できます。
交通事故の衝撃は本人はあまり記憶がないので、重症度を忘れがちですが、意外と強力な外力が加わっていることが多いのです。
椎間板の脱出と神経根の圧迫
正中矢状断面
脳腫瘍には沢山の種類がありますが、転移性脳腫瘍はタバコが原因のことが最も多いと言われています。日本ではこれまでがん死亡のなかでは胃がんによる死亡が圧倒的に多かったのですが、1994年には肺がんで死亡される男性の患者さんが胃がんを超えました。この原因は肺がんは2センチぐらいにならないと発見されないからです。
つまり発見されるのが遅いというのが最大の原因です。当院では慢性の頭痛、セキ、血タンの患者さんに時おり肺がんと同時に転移性脳腫瘍が見つかります。喫煙が人体に与える影響は、それまでに吸い込んだたばこの煙の総量と密接に関係します。
a…1日当たりの平均喫煙量(本数)
b…喫煙をしていた年数
吸入量はaとbをかけ合わせた喫煙指数(ブリンクマン指数)が用いられます。
例えば、1日1箱(20本)のペースで、20年吸い続けた場合の喫煙指数は、
20(本)×20(年)=400 となります。400以上は肺がんになりやすいデータがあります。
ドイツ人ミューラーの研究によると非喫煙者は肺がんになった人は3.5%と低く、喫煙者は65.1%と高率でした。
肺がんは喫煙と最も関連性の高い疾患と考えられています。肺がんが多いのは先進国に共通した特徴ですが、21世紀に入った日本でも、肺がんが胃がんを超えて最も多いがんになると予想されています。肺がんは脳に転移することが最も多いわけですが、転移性脳腫瘍が小さい場合はガンマーナイフ(放射線治療)で治療します。脳腫瘍にならない1日の喫煙量は3本未満です。
症状として、意識障害(おかしなことを言ったり、いわゆるボケの症状が多い)頭痛、頭重感、半身麻痺などの脳の局所症状で発生することがあります。
老人性認知に比べ進行が速やかであり、周りがビックリして“お父さんが急に呆けた”と言って病院に連れて来られることもあります。日ごとに麻痺が増強するので本人も呆然としています。MRI検査では下図のように誰が観ても解るような高信号の脳内血腫が見つかります。両側性の場合にはCT検査のみでは見落とされることがあり注意が必要です。
硬膜下血腫の内容はモーターオイル様の液体成分ですが、新旧の出血の成分が混ざっていることもあります。
治療は穿頭して内容の血腫を洗浄し除去することですが、予後は手術治療により良好です。脳神経外科の手術の中でも一番簡単で、一番患者さんに感謝される良性の病気です。
図はMRIで右前頭葉から側頭葉にかけ多量の慢性硬膜下血腫を認めます。1週間前から転びやすく激しい物忘れのため受診されました。手術をして正常に戻っています。
また、頚部エコー検査では頚部の血管を調べることで脳梗塞などに発展する可能性のある血管の動脈硬化が非常に詳しく分かります。とりわけ検査をお勧めしたい方は、家族に脳卒中経験者がいる方や、高血圧症、高脂血症、糖尿病のある40代以上の方です。当院では受診者の脳の血管を撮影し、回転3次元画像をビデオテープに収めて差し上げております。定期的に検査を受けられると、その方の脳の変化がわかりやすいためです。現在のご自分の脳の健康状態を詳しく知るためにも、ぜひこの機会に「脳ドック」の受診をご検討下さい。
MRA:正常な脳血管
エコー:頸部頸動脈
左は正常、右は脳梗塞になりやすい血管狭窄像
特徴的な症状はフラフラ感や頭痛、傾眠などの意識障害が出現します。
躯幹失調(立位・歩行不能)のため椅子に坐ってもらうことができず嘔気、嘔吐、めまいがあるため横になってしまいメニエル病などと誤診されることもあります。
MRIで確実に診断されますが血管の走行に一致した脳梗塞の部分が描出されます。図のMRI写真は右後下小脳動脈の脳塞栓の患者さんのMRIで右の小脳下面に脳梗塞の白い領域が明白に見えています。首のカイロプラクティック後に突然出現しています。脳血管撮影は、閉塞血管の同定および動脈硬化性変化をみるために有用です。
軽症の場合は点滴治療などで治りますが、意識障害を伴うような重症の場合は早急に開頭手術を行い救命することもあります。脳神経外科の疾患のなかでも急を要する病気の代表選手です。
脳の中の脳室が進行性に拡大して髄液が充満され脳全体の機能が低下する状態です。
特徴的な症状は記憶障害,歩行不安定および尿失禁の3つです。午前中に調子悪く午後になると歩きやすいというように症状が動揺するのも特徴です。原因のはっきりしない特発性と原疾患が明らかな症候性水頭症とに区別されます。症候性の最も代表的な疾患はくも膜下出血と中脳水道狭窄症ですがシャント手術がよく効きます。
歩行障害が最も早期にみられ,1ヶ月以内で物忘れや認知が現れます。知的活動性の障害は軽度ですが忘れっぽく不注意で自発性がなくなり会話,読書,趣味などに対する興味も薄くなり,何もせずボーとした状態が多くなります。尿失禁はトイレに行こうとしても間に合わないのが特徴です。
症状だけで水頭症とアルツハイマー病との鑑別はほとんど不可能ですが、MRI検査で海馬と全脳の萎縮の有無が確認出来れば区別されます。図は患者さんのMRIですが脊髄空洞症に伴う症候性水頭症です。左が発症前、右二つは水頭症になった後の画像です。脳の委縮と無関係に脳室拡大があり,丸い前頭角および海馬回に萎縮のみられない側頭角の拡大で診断されます。
手術は拡大した脳室とお腹をバイパスする脳室腹腔シャント術を行います。症候性水頭症に対するシャント手術の効果は抜群ですが、特発性の場合には効き目は不確実です。
水頭症は手術で治る可能性のある認知症の代表です。
頚椎の椎間板の変形が原因となって椎間板や椎体が後方や側面に突出し脊髄や頸神経根などを圧迫して障害する状態を頸部椎間板ヘルニアと呼んでいます。頚椎は10kg以上もある重い頭を常日頃から支えており、かつ自由に動くため解剖学的に腰椎と似て加重に伴う変化が起こりやすい場所です。変形による骨軟骨性の飛び出しは脊髄を圧迫するため手足のしびれ・フラフラなど様々な神経障害を来します。
重症の場合は椎間板摘出などの手術を行なうこともありますが軽症の場合、脊椎の自然治癒力を待って保存的療法を試みます。頸部のネックカラーによる安静固定、薬物療法、牽引などで改善する事が多いからです。
バレー・リュウ症候群
頸椎の変形は、ときに頸部の動脈を圧迫し、めまいや失神などを来すことがあります。
重症の場合、倒れ発作を繰り返すため救急車で運ばれることもあります。頚椎の曲げ過ぎや急に振り返った際に起こり易く、また骨棘による椎骨動脈の圧迫は、椎骨動脈周囲の交感神経網を刺激し、頭痛・悪心・耳鳴・顔面の疼痛や発赤・咽頭の感覚異常などを来すことがあります。これら自律神経障害を含む多彩な症状を後頚部交感神経症候群またはバレー・リュウ症候群と呼びます。症状は首や肩に痛みが強く頸部の運動が極度に制限されることがあります。痛みが長引いて筋掌縮が続くと首まわりの血流が悪くなり筋肉痛や神経の刺激による疼痛(大後頭神経痛など)などを生じます。
また、直腸膀胱障害による尿失禁が見られる場合もあります。診断にはMRI検査が特に有効で病変の重症度から自然治癒の可能性まで判断できます。
原因は脳幹部にある黒質の神経細胞から分泌されるドーパミンという物質が不足するために起こりますので、これを補うレボトパという薬や新薬のドーパミンアゴニストなどが著効します。昔は治りにくい病気の代表でしたが、最近は早期発見して軽症の内に治療を開始すれば、殆ど治すことが出来ます。
小脳性運動失調が体幹を中心に出現すると共に小脳性言語障害が加わります。症状としては立ち上がりや歩行が下手で転びやすく、手足の動きが不器用に振るえ書字が下手になり,ろれつが回らなくなります。眼振のため物が揺れて二重に見えたりすることもあります。緩徐に進行し病型によっては家族性、遺伝性に発症し、主要な症状は小脳性ないし後索性運動失調ですが,自律神経症状や痙性対麻痺が出現するものもあります。自律神経症状は排尿障害、起立性低血圧、便秘、発汗障害、体温調節障害、インポテンス、睡眠時無呼吸などです。一方,近年の分子遺伝学の進歩により脊髄小脳変性症の原因は遺伝子病であることが明白になってきました。
治療薬としてはホルモン剤であるヒルトニンやセレジストが有効で歩行障害などが改善することがあります。更に抗コリン剤のアーテンや抗菌剤であるバクタ-なども有効なことが多く、症状に合わせて処方されます。また運動不足により全身の筋肉が衰え易いので日常のリハビリテーションがとても大切です。
下の写真はMRI検査の図ですが、健常者(左)に比べて、患者さん(右)では橋底部の萎縮が著明で小脳全体にも強度の萎縮が認められます。
発作中は頭痛と同側の目が充血し涙が出たり、鼻が詰まって鼻水が出たり、顔に汗をかいて、まぶたが脹れるなどの自律神経症状も強く出ます。誘発因子は飲酒、光、ニトログリセリン、ヒスタミン等ですのでこれらを避けるようにします。頭をかかえて転げ回るほどの激しさで発作中は左の絵のように片方の眼、眼の上、こめかみのあたりを押さえながらじっとして居られずにウロウロと歩き回ってしまいます。一旦痛みがひどくなると一般の鎮痛薬は効かなくなりますので、激痛が長時間の場合は酸素吸入や新薬であるイミグラン注射で治療します。発作は治るまでに時間がかかるので予防薬であらかじめ発作を抑える事も大切です。
一般の頭痛薬では治りにくく、専用の治療を要する重症の頭痛です。
色々な薬物療法がありますが、特に有効なものは最近開発されたボトックス注射です。けいれんしている筋肉にボトックスを注射することで3~4ヶ月の間、症状が改善します。年に3~4回程度、この注射が出来れば、けいれんは治った状態になりますので日常生活に支障のある患者さんにはお勧めです。
昔から手術や保存療法など様々な治療法が試みられていますが確実な方法は今までありませんでした。手術は定位脳手術あるいは脊髄硬膜外電気刺激法などが行われますが効きにくい場合もあります。保存療法では専用の飲み薬やネックカラー装着が試みられますが、完治することはありませんでした。本症の長期的な予後は良好で、発症後数年から10数年で自然に治ることもあります。最近開発されたボツリヌス菌由来のボトックス注射は安定した効果があり痙性斜頚の治療に注目されています。重症の患者さんには即効性もあり有効な治療法です。
妊娠中の片頭痛はエストロゲンの急激な上昇が原因のため、妊娠の後半6ヶ月は良くなりますが出産後は再び頭痛が現れます。妊娠中の頭痛はなるべく服薬は避け患部を冷やすなどの対策をとり、服薬するなら鎮痛薬ではアセトアミノフェン(カロールなど)が安全です。アスピリン(バファリンなど)は胎児に催奇形性などの悪影響が出るため避けるべき薬です。コーヒー・緑茶は適量であれば頭痛に効果がありますが大量に摂るべきではありません。これらをヒントとして主治医と一緒に治していきます。
5~10才位の子供さんの頭痛は鼻炎などのアレルギーを伴うことが多く、自律神経の症状も前面に出やすいので腹痛や下痢、立ちくらみや吐き気、何となく具合が悪い不定愁訴も伴いますが、これらも立派な片頭痛です。抗アレルギー薬が予防薬として良く効きます。子供さんは自分の頭痛を言葉で訴えるのが下手ですので(大人の患者さんも下手ですが!)家族も無視しないで真剣に聴いてあげることが大切です。小児の登校拒否のうち頭痛が主因にも関わらず放置されている事がしばしば見られます。片頭痛は通常、月に5~6回程度ですが、これよりも頻発する場合は他の原因が潜んでいることがありますので精密検査を要します。
副鼻腔炎による頭痛は青天の霹靂の如く現れ、時に頭痛のみで難聴、鼻が詰まるなどの耳鼻の症状が軽微な場合があります。この場合、耳鼻科的治療が遅れるため頭痛が急激に悪化し我慢できなくなって受診されます。目覚めたときに頭痛がし、体を前に傾けるとズキンズキンと激痛になります。飛行機の着陸時に決まって猛烈な頭痛が起こることもあります。頭痛の部位としては前頭部や顔面、目の奥に多く片頭痛や三叉神経痛に似ています。激しい頭痛の原因である副鼻腔炎はMRI検査で簡単に診断できます。
治療は、急性発作時に抗生物質を用いて、安定した段階では穏やかな薬剤が使われます。軽症の場合は、粘液線毛機能改善剤、消炎酵素剤、抗アレルギー剤などの中からいくつかの薬を組み合わせて処方されます。治りにくい場合は少量のマクロライド系抗生物質を長期に投与するのが最近の主流となっています。薬物療法に適切な局所療法を組み合わせることで、ほとんどの症例は著しい効果を示します。慢性副鼻腔炎の急性増悪にはヤミックカテーテルを用いて副鼻腔内の貯留液を排液させる治療法が著効します。ヤミックカテーテルを用いると患者さんに負担が少なく、小児でも実施でき効果が優れています。
ロキソニン、クリアミンなどの頓挫薬は片頭痛に付随して起こる嘔気を助長する結果、薬剤の効果が不安定です。いずれも長期投与により慢性連日性 頭痛の一因とされる薬剤誘発性頭痛を来しやすいため注意が必要です。
1カ月に6回位までの発作であればタイムリーな片頭痛治療薬の頓挫薬トリプタンの使用にて対処可能です。最近発売されたトリプタン製剤のイミグラン点鼻液はこれまでのお薬が効きにくい患者さんに選択肢が増えQOL(生活の質)向上に貢献することが期待されます。イミグラン点鼻液は 飲み薬に比べ体内吸収率が大変良く、効果の発現も錠剤に比べて速く、注射剤と同等の有効性を示し嘔吐を伴う片頭痛の患者さんには最適の薬です。
繰り返す物忘れはアルツハイマー病の初期段階として早期治療の最も重要なターゲットとの認識がなされています。MCIは本人や家族が物忘れを実感し日常生活には困らない程度の状態ですが、重要なことは5~6年以内に8割程度の人がアルツハイマー病になってしまうことです。アルツハイマー病は65才頃までに発症しますのでMCIが60才前後に多いことと一致しています。
MCIの早期診断には認知テスト、脳脊髄液のタウ蛋白濃度測定、MRIによる側頭葉海馬の萎縮の度合い、スペクトによる後部帯状回における脳血流低下の異常を組み合わせることで可能です。
アルツハイマー病になると有効な治療法が少ないためMCIの段階で治療に参加してもらうことが大切です。早期に診断が出来れば治療効果の期待されるアリセプトや約10年後に発売される予定の新薬を組み合わせて治り易くなることが想定されアルツハイマー病の激減する日も間近と考えられます。但しMCIの中には正常圧水頭症や多発性脳梗塞などの関連疾患も含まれていますので日頃の脳ドックなどでの正確な検診をお奨めします。
アルツハイマー病の脳は進行と伴に萎縮して神経細胞内に神経原線維変化が起こり、 アミロイドの蓄積した老人斑が大脳皮質などに現れます。この老人斑が直接の原因と 考えられており、老人班により神経細胞死が起こるとされておリスペクトやMRI等で 診断出来ます。アルツハイマー病の治療法としては、老人斑に蓄積したアミロイドを ワクチンで除去する方法があり、非常に有効であることが分かってきました。
イブプロフェンや塩化リチウムなどもアルツハイマー病の治療薬となる可能性もあり、 現在臨床治験が計画されています。多くの有効な薬が出揃う10年後にはアルツハイマー病は 激減する可能性があります。
上図はアルツハイマー病患者さんのスペクト画像
日本では未だ十分な慢性頭痛の医療が行われておらず片頭痛が一つの病気であり治療すべきものとの社会的認識が低く、「頭痛もち」としてあきらめている場合が多いようです。市販の鎮痛薬の乱用も決して少なくありません。片頭痛の有病率は15歳以上の人口の約9%でこのうち68%の患者さんは頭痛の強さが寝込む程で障害度が強いと考えているにもかかわらず、仕事や社会生活を犠牲にしないよう我慢しています。病院の受診率は有病率、支障度の高い20~30代で40人中1人と極端に低く最も医療を必要とし仕事で活躍してほしい患者さんが受診されていないことになります。 片頭痛の治療は予防薬と頓挫薬に大別されますが、今年9月に4番目のトリプタン製剤マクサルトが発売になり更に治療が容易になってきました。軽症の方はセデスを中心とした頓挫薬で、中等症の人はミグシスを中心とした予防薬とマクサルトやレルパックスなどの組み合わせ、重症の方はシングレアやモービック等の予防薬とイミグラン点鼻薬でほぼ完治することが可能になっています。いずれも頭痛外来のある病院で治療することが可能です。当院ホームページの「健康チェック」で頭痛の種類が鑑別できますので受診の参考にして下さい。
血管内手術はGDCコイル塞栓術が代表的な方法ですが開頭することなく血管内カテーテルを介して患者さんに接するため低侵襲で安全性が高く急速に進歩しています。動脈瘤に対する根治術のうち2003年には血管内手術が約15%を占めるまで普及しています。動脈瘤のスタンダードな治療法は依然クリッピンク術が大半を占めますが手術難易度の高い部位の動脈瘤や、高齢者・内科的合併症のある症例には血管内治療が優れていることもあります。脳神経外科の手術も開頭しないで実施される手術が増えてきています。
直径25mmの巨大脳動脈瘤の血管撮影
過去に何度か帯状疱疹の経験がありますが良い治療法はありませんか?
単純ヘルペス脳炎の患音さんのMRI画像
強度の側頭葉の萎縮と認知症の後遺症を認めた。
腹部の帯状疱疹の発赤疹で
同部位に激痛を認める
最近症状も進んでいますが何か良い治療法がありませんか?
パーキンソン病の治療ができると不眠症も改善することがあります。
また、筋肉が緊張するため異常な収縮、振戦のほか老年者に多い夜間ミオクローヌスと呼ばれる下肢のピクピクした動きが周期的に起こり、パーキンソン病の進行とともに悪化することが知られています。この不随意運動は睡眠時に特に出現しやすく入眠困難や中途覚醒を起こします。入眠の初期にはα波がレム睡眠期に残っており、せん妄状態などを起こすことがあります。また行動異常の一つとして夜間の独り言も出現しますが、正常な方には見られないためパーキンソン病治療薬が関与するとも考えられています。
睡眠障害の原因が軽減すれば、当然、不眠症も改善されますが、病初期の患者さんは疾患に対する不安を抱いておられ、不安神経症や抑うつによる睡眠障害が多く見られます。睡眠障害はパーキンソン病の症状を悪化させ、それはまた睡眠障害を起こすというように、悪循環を招くことを考えると不眠症に対する治療もパーキンソン病治療の重要な要素と考えられます。
パーキンソン病患者の姿勢異常(Gowers)
周期性嘔吐症は、精神的ストレスや、風邪などの感染症に伴う食欲不振、睡眠不足などが引き金となり、反復性で強い嘔吐発作を繰り返す疾患です。5歳以上の小児の約2%に発症するといわれており、その多くは10歳ごろまでに症状が消失します。特徴として(1)嘔吐や悪心、腹痛。(2)夜間や早朝などに突然発症する発作性疾患で、発作の間欠期にはまったく正常。(3)過重なストレスの後に症状が現れる。(4)片頭痛の家族歴を持つ子が多く、本人も成人後に片頭痛に移行する確立が高い。という4点があげられます。腸の血管を拡張させ嘔吐や腹痛を引き起こす因子として、消化管粘膜に高濃度に存在する神経伝達物質セロトニンの関与が疑われており、成人の片頭痛の原因物質と共通です。
日常生活に大きな支障を来すほどの周期性嘔吐症であれば、片頭痛の家族歴などを参考にしながら片頭痛予防薬のセロトニン拮抗薬を就寝前に連日服用することで良くなります。
図は頚部内頚動脈エコー。血管が詰まりかけており脳梗塞になる寸前の状態
二つの治療法があり、特に有効なものは最近開発されたボトツクス注射です。けいれんしている筋肉にボトツクスを注射することで3~4ケ月の間、症状が改善します。年に3~4回程度、この注射が出来れば、けいれんが起こらない状態になりますので日常生活に支障のある患者さんにはお勧めです。重症の場合は、顔面神経を圧迫している血管を剥がす手術を行います。他に脳腫瘍の初期症状として現れる顔のけいれんもありますので精密検査が必要です。
治療は、まず日常生活動作に注意を要します。例えば腕を下げて行う作業や首の前屈みの不良姿勢で行う作業を出来るだけ避け、重たい物を持ち上げたりしないようにします。リハビリテーションとして温熱療法、ストレッチング、筋力強化の練習をしてもらい、更に装具療法として肩甲帯支持バンドを着用し腕神経叢の緊張を取り除きます。痛みの悪循環を改善するために非ステロイド系消炎剤、筋弛緩剤、ビタミンB製剤を服用し、自律神経症状に対しては抗不安剤を服用します。頑固な症例に対しては星状神経節ブロックなどの神経ブロック治療を行います。手術治療は先天奇形である頚肋の切除などを行いますが、自然軽快することも多いので対象となる症例はきわめて稀です。