頭痛の症例を元にQ&A形式で情報を公開しています。
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32歳の主婦で20歳頃から片頭痛で悩んでいます。最近、物忘れがひどく、血圧もコレステロールも低いのですが病院では脳梗塞と診断され心配しています。
病院でもらった薬を飲みすぎると片頭痛が治らなくなると新聞に書いてありましたが、どういう事でしょうか?
主婦で36才です。最近、左側の耳鳴りがひどいので脳神経外科を受診したところ、脳動静脈奇形と診断されました。治療法を教えて下さい。
43才の会社員です。手が痺れ、足に力が入らないため、病院を受診したところ多発性硬化 症と診断されました。インターフェロンを勧められましたが、他の治療去は無いでしょうか?
片頭痛持ちの56歳男性ですが、先月社員の結婚式でスピーチをした直後から記憶が飛んで変になり、救急車で病院に運ばれました。翌日は正常に戻りましたが、前後の記憶は無いままです。何か病気の前兆でしょうか?
頭痛持ちの27才、OLです。最近、生理前後に頭痛が強くなり仕事に支障があって困っています。片頭痛はどうして起こるのでしょう
パーキンソン病の治療に磁気刺激治療があるそうですが、どのような効果があるのでしょうか?
58才の男性です。3週間前より5分程度続く視力低下が1日に2~3回あります。特に左手に力を入れたり持ち上げたりした時に起こり、めまい感も同時に出現します。
片頭痛持ちの32才の主婦です。娘も母も家中が片頭痛で悩んでいますが、何か良い治療法はありませんか?
27歳のOLです。先の地震でマンションが壊れて以来、体がいつも揺れている感じ、不眠や胸のドキドキが続いています。どうしたら良いでしょうか?
24歳のOLです。3年前に交通事故でむち打ち症になりましたが、その後より毎日のように頭痛があり困っています。横にならないと治らないので会社では怠け病と言われています。頭痛を治す方法はありませんか?
32歳の主婦です。1年ほど前から性行為後に激しい頭痛が起こり半日以上続きます。鎮痛薬が効かないため、横になって我慢していますが、治療法は無いでしょうか?
40代の男性会社員です。最近、飛行機に乗るたびに激しい頭痛が起こり鎮痛剤が効かずに困っています。どのような治療をすれば良いでしょうか?
病院にて片頭痛と診断されトリプタン製剤が処方されましたが、時々効かないこともありスッキリしません。手や顔もしびれることがありますが、どうしてでしょうか?
40代のシステムエンジニアです。4~5年前から後ろ頭を中心にハチマキ状に締め付けられる頭痛が毎日のように仕事中に起こります。休日にテニスをすると治りますが、毎週月曜日は仕事に行くのが優鬱です。
頭痛が体操で治ると聞きましたが、どんな体操がよいのでしょうか?
25才のOLです。最近、頭痛の直前に何度か目が見えなくなり、眼科では異常が無く閃輝暗点だろうと言われ頭痛外来を勧められました。
46歳の男性会社員です。右顔面を中心に目と頭の痛みが続いてます。耳鼻科で鼻咽腔炎と言われましたが頭痛だけが治りません。
7才の未婚女性です。先月より妊娠していないのに乳汁分泌があり生理が止まってしまいました。婦人科でプロラクチノーマと診断されました。
50代の男性です。10年前から手足が太くなり、顔全体もだんだん大きくなってきました.巨人症ではないかと言われ精密検査中です。
頭痛持ちの37才主婦です。最近、肩こりから始まるひどい頭痛で困っています。病院で緊張型頭痛と言われ薬物治療をしていますが一向に良くなりません。
頭痛持ちの36才の女性です。産後から頭痛が激しくなり頭痛外来でトリプタンをもらいましたが効かない事もあり困っています。
最近、話題になっている頚性神経筋症候群について詳しく教えてください。
昨年、定年退職した61才の父が、ときどき記憶が飛ぶようになりました。病院でMCIと言われましたがアルツハイマー病とは異なるのでしょうか?
75歳以上の5人に1人がアルツハイマー病であると聞きました。アルツハイマー病の早期発見や予防はできるのでしょうか?
うちの5才の娘が、最近頭が痛いといって不機嫌になることがあります。子供の頭痛は脳神経外科で診ていただけますか?
当家の家族は皆、太っており脳卒中の家系です。太りやすい遺伝子があると聞きましたが、それは本当ですか?
先日、親友がヘルペス脳炎という聞き慣れない病名で入院したのですが、どんな病気でしょうか?
脳梗塞の治療に手術がある事をテレビで知りましたが、詳しく教えて下さい。
32才の専業主婦です。二人目の子供が欲しいのですが、長女の出産前後に頭痛がひどくて、つらい思いをしました。妊娠時の片頭痛治療法を教えてください。
【小児周期性症候群】 小学5年の女の子です。頭痛持ちですが、めまいと腹痛も交互に起こって学校を休みがちです。小児科でも原因がわからないと言われますが、頭痛と関連があるでしょうか?
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少し専門的なお話ですが昨年(2003年)、オランダのライデン大学で行われた研究で片頭痛のタイプによっては脳に病変が出現する事が確認されました。内容は片頭痛が発作性疾患ではなく、慢性発作性の進行性疾患で予防や治療を行わないで放置すると脳梗塞などの病気になりやすいと言う結論です。
片頭痛を放置すると脳梗塞が増加
片頭痛のなかでも発作が月に1~2回以上と頻繁に起こり、しかも閃輝暗点などの前兆を認める人は頭痛の無い人と比べ、後頭部に脳梗塞の出現する頻度が約16倍高かったということです。更に片頭痛を有する女性は深部白質病変を呈する頻度も2倍高く、その頻度は発作回数が多いほど上昇しています。最もリスクが高かったのは1か月に1回以上の発作を起こす人で、3倍上昇していました。
女性に限定すると前兆の有無を問わず片頭痛患者は深部白質病変が増加しており、虚血性脳血管障害になリやすい従来の心血管系の危険因子(高血圧や高脂血症など)による影響を受けませんでした。発作性頭痛のある人の3%が年間180日以上にわたり頭痛を訴える慢性頭痛や物忘れに進行することも明らかにされ、片頭痛自体が慢性頭痛に至る危険因子と考えられ、新たな治療法で対処すべきと考えられます。片頭痛の脳病変が臨床的に有意に相関するのであれば、危険因子の調整、予防的治療、急性期治療薬の選択など、疾患の進行を予防するための新しい治療計画が必要となります。
32歳女性の片頭痛患音さんに見られた後頭葉の脳梗塞(MRI)
参照:日本人間工学会ノートパソコン利用の人間工学のガイドライン(1998年労働科学研究所発行)
・ディスプレイの角度は、やや見下ろすようにセットし、目からの距離は40Cm以上離す。
・ディスプレイの照度、明るさと周囲の照明を適度に調節し、ディスプレイの反射を押抑える(300~1000ルクスが目安)。
・パソコンの作業時間は、1日最大6時間を目安とし、1時間ごとに10~15分の休息をとる。
・目からの視対象(画面、原稿、キーボード)までのそれぞれの距離が大きく異ならないようにする。
治療はガンマーナイフと外科的手術、血管内手術の三つが中心です。ガンマーナイフによる手術は最も安全で成功率の高い治療法です。ただし完全治癒までに1ないし2年以上を要すること、更にナイタスの直径が3cmを超えると効果が不完全になるなどの欠点があります。外科的には全摘出術が推奨されており、AVMが適切に摘出されると、永続的麻痺の起こることは少なくなります。特に大きなAVMで、多くの流入動脈を有する場合、正常潅流圧突破現象(normal perfusion pressure breakthrough)を防止するために出血が少なく、血管の確認が容易である段階的手術が望ましく、4~8週の間隔をおいて手術を実施します。他に上記の二つの治療が困難な場合は流入動脈を塞栓する血管内手術も実施され、症例により治療法の選択が可能です。
写真は36才女性のAVMの脳血曽嬬影、左前頭葉に直径4mのナイタスを認め手術にて完全に摘出することが出来ました。
診断はMRIで行われ、精度は90%以上です。他に髄液検査・視覚誘発電位・CTなどの標準的な検査も同時に行われますが、精度は不確かです。MRI上の多発性硬化症の脱髄病巣は、大脳深部の脳室周辺や皮質下に多発するため、脳梗塞などと異なる特徴的な分布を示します。
インターフェロンβ療法は、多発性硬化症の長期予後を改善する最も有効で画期的な治療法ですが、経済的あるいは副作用の問題などもあり、更に新薬の開発が望まれています。急性増悪時には再発進行抑制とは異なった治療法であるステロイドの大量パルス療法が奏功します。他に温度感受性障害や易疲労性、うつ病、三叉神経痛なども合併しやすく、これらの対症療法もQOLの改善に直接結びつき、治療法を適切に組み合わせることで予後を著明に改善することが出来ます。
写真は43才男性のMRIで、脳室周辺や大脳の皮質下(赤丸)に多発性硬化症の病変を認めます。インターフェロンβ療法が著効しています。
昔の古い記憶たとえば10年前に家を新しく建築して苦労した話などはできますが、つい最近の新しい記憶、たとえば当日の朝食のことなどは忘れています。TGAの発作の後には、新しい記憶ができない順行性健忘や、発症前に遡って記憶が障害される逆行性健忘の両者が出現し、エピソード記憶、近時記憶の障害が存在するものの、即時記憶は保たれているのが特徴的です。TGAでは数字の復唱は可能で、意味記憶は障害されないので、諺の意味は正確に説明可能です。また手続き記憶も障害されないので車の運転は可能です。見当識はTGA中に障害されていることが多く、その後時間、場所に関する障害が目立ちますが、人に関するものは障害されないのも特徴です。
病前より片頭痛を合併している率が高く、誘因は強度の精神的・身体的ストレスに困ることがほとんどです。若年者でのTGAの原因が片頭痛であるとする報告があり、片頭痛の関係は重要です。病変部位は側頭葉の内側、海馬付近であることがMRI所見などより明らかで海馬を中心に局所性の浮腫を認め、cortical spreading depression:CSDの所見と考えられています。治療は片頭痛の予防薬である塩酸口メリジンが唯一有効な薬剤であり、片頭痛の前兆の病因と考えられているCSDを抑制し、TGAを改善できると考えられています。
(1)うつ病…うつ病患者は左の皮質興奮性が右に対して低い非対称性があり、皮質興奮性を一過性に高める5~20Hzの高頻度磁気刺激を左の外側前頭前野に刺激する方法が主流です。
(2)脊髄小脳変性症…厚生労働省班研究として「脳磁気刺激による神経難病治療法の開発に関する研究」がスタートし、磁気治療の有効性が検討されています。
(3)尿失禁…仙骨部に高頻度磁気刺激を行い、尿失禁治療を行う研究が行われています。非侵襲かつ手軽な治療法として期待されています。
鎖骨下動脈の閉塞の原因は動脈硬化に因る事が殆どですが、本邦に特有の脈無し病(高安病)によるものも報告されています。病変は左側で、年齢は40~60才台に多く、治療は外科的に血行再建術あるいは血管内手術が行われ良好な結果を得ています。動脈の狭窄は急に起こるものではなく高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙などのある方に病変が徐々に進行します。このような危険因子をお持ちの方は頸動脈エコーや脳血管撮影などによる動脈硬化の診断と予防治療をお勧めします。
PTSDとは、心的外傷体験として身の安全が脅威に晒され、著しい精神的衝撃を受けるような出来事が起こった後、特徴的な精神症状を生じることを言います。心的外傷としては災害、事故、犯罪、性的暴力、虐待、拉致監禁、戦闘などです。他人の被害を目撃したり、知人が被害を受けたことを聞いたりすることでも起こります。
PTSDの症状は再体験、回避/麻痺、過覚醒の3つの症状群から構成されます。再体験とは、外傷的出来事の光景が繰り返し蘇るフラッシュバックや悪夢などで、回避症状とは、出来事に関わる思考・感情や会話を忌諱したり、出来事を想起させる事物や場所を避けることです。麻痺症状とは、興味や関心の喪失、自然な感情の鈍麻、他人との疎隔感などで、過覚醒症状とは不眠症、いらいら感や怒りの爆発、集中困難、過剰な警戒心などです。
PTSDの生涯有病率は5~10%であり、まれな障害ではありませんが、深刻な外傷的出来事があってもPTSDとなるのは一部の人であり、大部分の方は時間経過とともに自然回復することが知られています。PTSDの病態を有害な記憶の消去の失敗と捉えるならば、記憶消去の中枢である内側前頭前野の障害が一次的原因となっている可能性があります。これを治療するために一部の抗うつ剤あるいは経頭蓋大脳磁気刺激法(TMS)などが有用と考えられ実用化されています。
脳と脊髄は、硬膜・くも膜・軟膜の3層からなる髄膜に包まれています。髄膜の内側には無色透明な脳脊髄液があり、脳と脊髄は髄液に浮かんでいます。低髄圧症候群は髄液がどこからか漏れることで、髄液量が減少するために起こります。軽微な頭頚部及び脊柱外傷や何らかの負荷(ストレッチ、いきみ、咳など)により髄液の漏れが発生することが分かってきました。
急性期の症状は頑固な頭痛が主で、立位や座位で症状が悪化し横になると軽減するのが特徴です。慢性期になると嘔気、眩暈、だるさ、背中や首の痛み、記憶力・集中力の低下などの多彩な症状が出現します。
診断はMRI(下図)などで行ないます。びまん性硬膜肥厚と造影所見および脳幹部の平定化、小脳の下垂などの所見が特徴的です。 保存的治療としては臥床安静・水分摂取、観血的治療としては硬膜外腔へ持続性の生理食塩水やデキストラン注入が用いられています。またブラッドパッチという、漏出部に合わせて少量の自己血を硬膜外腔に注入する方法もあります。注入した血液が糊の役目を果たし、硬膜に開いてしまった穴をふさぐと、髄液の圧が高まり治療直後から劇的に症状が改善することになります。無効の場合は注入量の変更や、髄液漏部閉鎖術が追加されます。
低髄圧症候群のMRI(脳幹部の平定化、小脳の下垂、硬膜の造影所見を認める)
機内での頭痛は気圧の変化に伴う片頭痛、あるいはアレルギー性鼻炎による真空頭痛などがあります。あまりにも激しい頭痛のためクモ膜下出血などを心配されて脳神経外科を受診されます。MRIなどで診断可能で、主に着陸時に転げ回るほどの激しい頭痛が前頭部や目の奥などに出現し、薬が効きにくいのが特徴です。真空頭痛では副鼻腔の自然孔が閉塞していて、空気の逃げ道が無いため、気圧の影響を受けやすくなります。つまり副鼻腔内が離陸後、上空で減圧された状態から着陸時には加圧され急激に陽圧状態になることで三叉神経関連の突発性頭痛がおこるのです。
三叉神経は頭痛の主要な担い手で前額部や目の周囲(第1枝)鼻や頬(第2枝)後頭部(第3枝)に枝を伸ばし痛みを敏感に伝える働きがあります。
脳に近接した副鼻腔の粘膜には三叉神経が密に分布しており、アレルギー性鼻炎があると、気圧変化などにより圧迫あるいは牽引されると痛みを瞬時に引き起こします。副鼻腔炎の中でも特に前頭部や頬周辺に起こったものは袋状になりやすく頭を下げるなどの日常動作の中でも痛みが激しくなることがあります。
自然孔の閉塞は抗生物質、粘液線毛機能改善剤、消炎酵素剤、抗アレルギー薬、加湿などを組み合わせて治療できます。機内で痛み出してからでは治らないので搭乗1週間前からの予防的治療と搭乗30分前に鎮痛剤を内服しておくと効果的です。
片頭痛時には悪心・嘔吐のために胃内容物の停滞がおこり、経口薬の吸収が遅延されます。また頭痛薬を3ヶ月以上にわたり月に10日以上使用すると薬物乱用頭痛が起こりやすくなるため、胃薬や片頭痛予防薬の追加などの工夫も必要になります。
最近の研究からストレスが免疫と密接に関連し、痛みというストレスによって免疫の機能が抑制され、ひいては悪性新生物の発生や増悪などを来す可能性などが指摘されています。従って不必要な痛みを取ることは、生活の質、いわゆるQOLの立場のみでなく生体の防御など免疫機能の面からも非常に大切であり頭痛治療を積極的に行うことが健康への第一歩と言えます。
システムエンジニアなどデスクワークの方に多い病気ですが、頭痛を引き起こすテクノストレス、社会心理的ストレス,運動不足、うつむき姿勢などの悪い因子が揃っていると起こりやすくなります。時に口・顎部の顎関節症などの機能異常を来すこともあります。
鎮痛剤など乱用されている事も多く、薬物を含め予防的な治療が必要になりますが、非薬物療法では頭痛体操などの運動療法、鍼灸、ボツリヌス注射などがあります。特に頭痛体操が有効で頭痛外来で指導を受ける事をお勧めします。個々の症状に合わせた治療の選択が可能です。
原因は首を前傾する姿勢が多い、長時間同じ姿勢をとる、枕の高さが合っていないなど身体的なものや、抑うつや緊張感が持続するストレスからくる精神的なものがあります。心が緊張すると体も堅くなり力が入るためですが、慢性頭痛を予防・改善するために重たい頭を支えるために首の筋肉を鍛え、首周辺の筋肉の血流をよくすることが大切で筋力アップおよび血流をよくする体操を行います。当院では専門家による頭痛体操特別レッスンを実施中ですので受診をお勧めします。
この前兆時には局所的に脳血流量の低下が起こると言われており、同時に大脳皮質または脳幹の神経症状が出現します。およそ30分以内の前兆に続いて脳の後方から前方へ脳血流量が増加し、これに伴う血管拡張が起こり片頭痛が出現します。原因はセロトニンサージによる皮質動脈の血管撃縮あるいは拡延性抑制spreading depressionと考えられています。閃輝暗点と同時に「ちくちく感」が顔、腕または足に現れ、移動し横断します。この間、発語、作文、思考が困難となり頭が真っ白になり記憶が飛んだりすることもあります。この閃輝暗点が頻回に繰り返されると大脳皮質細胞の器質的な変化を起こす可能性もありMRI検査などの画像上で脳梗塞などと誤診される可能性もあります。
前兆自体の治療法は無いため、月に6回程度の片頭痛で前兆が頻回に起こる患者さんは脳の障害を回避するために片頭痛の予防薬である塩酸ロメリジンなどの服用が望ましいと思われます。片頭痛は予防治療が可能な脳の疾患です。
この部分の粘膜内には頭痛神経である三叉神経第2、3枝が支配しており炎症反応が出現すると頭痛神経を刺激し片頭痛とは異なる慢性頭痛を起こします。前頭部痛は軟口蓋背面、頭頂部痛は鼻咽腔天蓋、側頭部痛は下鼻遵天蓋後半部、後頭痛は鼻咽腔後壁といったように頭痛の局在と炎症部位が一致するのも特徴です。炎症のある鼻咽腔に内祝鏡下に塩化亜鉛などを塗布すると、頭痛が劇的に改善することが分かっています。昔から経験されており、慢性の頭痛持ちで鼻の奥の方と、のどがとリヒリするなどの訴えのあり頭痛薬が効きにくい方はこの疾患の可能性があります。 いわゆる花粉症の場合などは必ずといってよい程、この部分の炎症が伴いますが、耳が塞がる感じになる耳管炎の合併もしばしばみられます。
長引く頭痛や肩こりなどで慢性疲労症候群と診断された患者の中にも鼻咽腔炎の治療によって症状が改善する患者さんがおられ、今後注目される疾患の一つと考えられています。
治療はドーパミンアゴニストであるカベルゴリンなどの薬物療法が中心で、マイクロアデノーマの90%以上はプロラクチン値を正常化することができ、根治も期待できます。服薬中はプロラクチンを正常範回に下げておくことができますが中止後、再び上昇する場合は経蝶形骨洞法による腫瘍摘出も有効な治療法になります。副作用などで服薬困難、服用中に妊娠したくない方あるいは腫瘍が巨大で日の症状が強い場合などは手術療法が選択されることになります。
症状は主に3つに分類されます。
過剰なGHによって起こる症状:手足の肥大、下顎の突出・鼻唇の肥厚、巨大舌、多汗など
他のホルモンが低下することで起こる症状:月経不順・無月経、疲れやすい、むくみやすいなど
腫瘍が脳内を圧迫することで起こる症状:頭痛、視力低下・視野狭窄など
治療は原因である腫瘍を取り除く手術が一般的です。手術が難しい場合や手術後もまだGHが高値の場合などは、薬や放射線による治療を行います。アクロメガリーは、発症から確定診断までに平均9年もの歳月を要しています。その原因として、発症初期には特有の症状が目立たないこと、その他の臨床症状が多岐にわたるため、すぐにはこの疾患が疑われないこと等が挙げられます。また少しずつ進行するため、本人が自覚しにくいこともあります。アクロメガリーはGHが適切にコントロールされれば死亡リスクは低下し、臨床症状の改善が期待される疾患です。深刻な病気を引き起こさないためにも早期発見・早期治療が大切です。
写真は57才のアクロメガリー患者さんの横顔
片頭痛の症状として時間的に一連の「予兆」、「前兆」、「頭痛」、「後症状」がありますが、このうち予兆は「肩こり」や「生あくび」、「空腹感」などが代表的で、中でも一番多いのが「肩こり」です。閃輝暗点などの前兆は一部の人にしかみられませんが、予兆は多くの患者さんに現れ、頭痛の直前に首から後頭部に向かって肩こりがグーッと上がってくるように感じることがあり。これを「肩こりから頭痛が起こる」と患者さんが表現すると、緊張型頭痛と誤診される原因になります。予兆としての肩こりが通常の肩こりと異なる点は突然出現し、生あくびや空腹感など他の随伴症状が同時に起ることです。
片頭痛の診断に特に重要なのは、普段どおりに家事や仕事ができないなど「日常生活に影響がある」ことです。さらに「動くとガンガン響いて辛い」「吐き気がして吐いてしまう」「光、音、匂いに過敏になる」などの特徴があれば片頭痛が確実と判断されます。体動による症状の悪化は片頭痛であれば比較的早い段階からみられますので、自分で判断する際にも便利です。一方、緊張型頭痛の肩こりは慢性で動いてひどくなるなど症状の動揺や変化が少ないため、重症で発作性の肩こり片頭痛との判別は容易になります。
トリプタン製剤を1度試して効果が無かった場合、片頭痛か否かの診断を再度検討します。特に発作性の緊張型頭痛や急性副鼻腔炎との鑑別が大切になります。片頭痛であれば、頭痛発現後30分程度の早めの服用を指導します。少なくとも2~3回の発作に試しても効果が無い場合はトリプタン製剤の増量や他のトリプタン製剤への変更、特に生理前後の片頭痛にはトリプタン製剤と非ステロイド系抗炎症薬との併用を考慮します。更に月に2回以上の片頭痛発作が定期的に出現する場合は塩酸ロメリジンなどの薬物による予防治療が大切になります。
服薬時期は頭痛開始早期で髪にさわるとぴりぴり痛む、痛む側の頭を枕に付けて寝られない、顔や手がぴりぴり痛む、めがねを外したい、といった皮膚アロディニアの出現前が望ましいでしょう。また片頭痛治療薬は頭痛発作の経過に合わせて注射、点鼻薬、口腔内溶解剤、錠剤などの使い分けが可能なので、頭痛日記などを作製して診察の時に主治医と話し合う事も有用でしょう。
治療では頸部筋肉の緊張と圧痛を緩和し、柔らかくほぐす必要があります.薬物療法、低周波などの物理療法、鍼灸療法、温熱あるいは冷罨法およびリハビリテーション等などを組み合わせて実施します。治療が奏功すると頭痛、めまいなど多くの症状が劇的に改善することが知られています。
MCIは本人や家族が物忘れを実感するものの日常生活には支障ない状態ですが、重要なことは5~6年以内に8割程度の人がアルツハイマー病になってしまうことです。アルツハイマー病は65才頃までに発症しますのでMCIが60才前後に多いことと一致しています。
MCIの診断には認知症テスト、脳脊髄液のタウ蛋白濃度測定、MRIによる側頭葉海馬の萎縮の度合い、スペクトによる帯状回における脳血流低下の異常を組み合わせることで可能です。
アルツハイマー病は進行期になると有効な治療法が少ないためMCIの段階で治療を開始することが大切です。早期に診断が出来れば治療効果の期待されるアリセプトや約7年後に発売予定の新薬と組み合わせることで予後の改善が期待されアルツハイマー病の激減する日もそう遠くはないでしょう。但しMCIの中には正常圧水頭症や多発性脳梗塞などの疾患も含まれていますので脳ドックなどでの早期の正確な検診をお奨めします。
MCIの段階では物忘れを中心とした記憶障害のみ起こるのが特徴です。MCIの記憶障害の特徴は中間期記憶、出来事記憶の障害です。数分から数時間前の記憶を中間記憶といいますが、その中間記憶が障害されると、ちょっと前に言ったことを忘れたり、何度も同じことを言い、しょっちゅう探し物をするようになります。またアルツハイマー病の本態は、脳組織に老人斑ができ、神経細胞が変性脱落消失して、その結果、記憶細胞やネットワークが破壊されるため認知症が起こっています。最初は記憶の中枢である側頭葉の海馬という場所から、このような変化が起こり、次第に脳の全体へと波及していきます。
この海馬の障害は精神的なストレスや酸素不足により進行しやすい関係があることが報告されています。精神や心のストレスは、脳の神経細胞の障害を起こしやすく神経細胞死や脱落を来しやすいために、認知症を発症するのに十分な準備段階となり、MCIやアルツハイマー病が発症するというものです。従って予防にはストレス社会といわれる現代の環境のなかで過度で長期に続くストレスにさらされない日ごろの生活習慣への変更する事が重要と考えられます。また同時に生きがいのある、社会に貢献できる仕事を継続して生涯現役でいようという気概を持ち続けることも重要な予防法であるといえます。また高血圧や高脂血症あるいは糖尿病などがアルツハイマー病の促進因子と認識されるようになりました。
認知症予防のための食生活などの目標として体脂肪を減らし、規則正しい食生活をし、適度な有酸素運動を日課にするなどの工夫が必要です。
頭痛が起こっている時は音や光に過敏になり、身体を動かすとよけいに悪化しますので明かりを消し、カーテンを引いた暗めの部屋で安静にさせてください。また頭痛が起こりそうな時に血行がよくなる労作をすると発作を促進するため、入浴や体育の授業は無理にさせない方が良いでしょう。
脳の成長課程にある小児期の片頭痛は頻繁に起こる場合には難治性になり精神的な負い目になることもありますので予防薬で2~3ヶ月治療し改善を期します。他に鼻炎や嘔気などの消化器症状が強い場合、予防薬に加えてこれらの症状にあわせた治療薬を併用する事で頻度が減り頭痛が改善します。それでも頭痛が起こる場合にはトリプタン製剤を使用します。トリプタン製剤は通常のクスリと異なり片頭痛のみに効果のある薬ですが頭痛が起こり始めてから30分以内に内服すると良好な効果が得られますので我慢しないで早めに内服するのが大切です。幼児期の頭痛はストレスや熱発などで出現するため単発の頭痛薬で改善することが多く予防薬は通常不要です。学校で頭痛が起こった時のために担任や養護の先生に頭痛の特徴や発作時の対処法について説明し、いざと言うときに協力がえられるようにしておくと便利です。
基礎代謝とは何もしないでじっと寝ていても心臓を動かし、呼吸、体温を保つなど生命維持に最低限必要なエネルギーのことです。平均的な基礎代謝の目安は1日に男性1500Kcal、女性1200Kcalです。基礎代謝が低い人は高い人に比べ消費するエネルギー量が少ないので太りやすいといえます。
たかだか200Kcal低くなるだけとバカにしてはいけません。脂肪1kgは7,000Kcalの熱量を持っていますから、もし毎日200Kcalが消費されずに余ってしまうと35日で1kgの体脂肪がついてしまうことになります。怖いですね。では遺伝子を持っていると、もうどうしようもないのかというと、そうでもないのです。遺伝子を保有していてもその遺伝子にスイッチが入らないこともあるのです。遺伝と環境は3対7で影響を及ぼすと言われており、環境因子の方が影響が大きい、つまり遺伝子よりも生活習慣のほうが影響力が大きいのです。まずは、基礎代謝を高めるために適度な筋肉をつけましょう。食事では低脂肪高たんぱく質の食事(大豆・大豆製品・脂身の少ない肉や魚)を中心にとり、腹筋やお尻、太ももなどの大きな筋群の筋力トレーニングを行いダイエットを実行しましょう。
神経痛や疱疹皮膚炎で有名なヘルペスウィルスが脳内に入ると脳炎を起こし側頭葉と前頭葉、脳幹部などを破壊します。側頭葉が破壊されると失語や失認,健忘の症状が出現し更に両側の障害では視覚失認、性行動異常、性格変化に加え、手にしたものは何でも口に運んでしまうクリューバーブーシー症候群と呼ばれる病態が出現します。前頭葉の障害では自発性低下、記憶障害、判断力の低下などをきたします。
先日、当院に健忘を主訴に受診されたヘルペス脳炎の後遺症患者さんがおられました。知能はまったく正常ですが5分前に起こった事を全て忘れてしまいます。会社の管理職だった方で復職したものの仕事はなく、判断力は保たれていますが他の社員との間にトラブルが耐えない状態です。トラブルを起こした事自体を忘れていますので、また翌日同じ問題を繰り返すという本人にも会社にとっても気の毒な状態です。
ヘルペス脳炎は昔、死亡率の高い疾患でしたが、抗ウイルス剤の登場により20年前から亡くなる方が減少している反面、再燃性、遷延性の経過をたどる脳炎が問題になっています。ヘルペスウィルス感染によって脳に生じる遅発性のアレルギー反応がこれに相当しますが、何度も脳炎の症状を繰り返して治りにくいため特殊な治療が必要です。
ヘルペス脳炎は一般に急性の経過をとり、初発症状は頭痛と発熱、項部痛などで風邪の症状にも似ています。普通の風邪と思って朝、出勤すると、やがてうつらうつらするといった意識障害があり、そして昼過ぎ頃に突然のけいれんや片側の麻痺が出現し、病院に運びこまれるというのが典型的なパターンです。こうした症状は通常1~2日ですべて出揃いますので脳炎の迅速な診断と早期の治療が大切になります。診断は典型的な症状と血清検査、治療は出来るだけ早期で充分量の抗ウィルス剤投与を行います。
CEAは頸部の血管を切開して内部の粥状硬化部分を切除し狭窄のない正常な血管腔を形成する熟練を要する手術です。この手術は米国では年間13万例以上実施されており、1990年代から大規模臨床試験が行われ有用性が確立されています。狭窄度60%以上の場合、薬物治療よりCEAの方が予後良好とされています。ステントは下肢の血管内から細い頸部用のチューブを挿入して頸部の血管まで通し、内側から特殊な金属などで補強して狭窄のない状態を形成する血管内の手術で、最新の設備と高度なテクニックを要求されます。広汎な狭窄や閉塞の場合は前の2つが応用できないため、頭部と頸部を同時に切開してバイパスする血管吻合術も行われますが手術野の広い大手術になります。CEAなどの外科的治療はあくまで血管局所に対する治療であり高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、生活習慣などをコントロールして予後の改善を図ることも大切です。
片頭痛は一般的に初潮と同時に発症し、月経の2日前から月経後3日目までに出現しやすく、妊娠時は6ヶ月目まで持続し分娩後に再燃します。月経前後の頭痛は仕事や家事を休む人が半数近くおられ、いつも休む人は14%、休みたくても我慢して仕事する人が31%で90%以上の方が日常生活に何らかの支障を感じていますが、病院で専用の治療を受けている方は殆どおられません。
片頭痛は妊娠可能な年齢に好発するため、病院では常に妊娠の可能性を確認することが必要ですが、エルゴタミンは妊婦への投与は禁忌です。イブプロフェンは軽度のリスクですが、アセトアミノフェンは更に安全です。妊娠が分かれば原則的に予防薬や治療薬は使用せず安静、冷却、マッサージなどの非薬物療法がお勧めです。トリプタン製剤の妊婦の服用は催奇形性や先天性欠損など非投与群と有意差無く、妊娠が分からない段階での突発的な使用に関しては特に危険性はないと報告されています。授乳に関してエルゴタミンは禁忌ですが、トリプタン製剤は注意して投与できます。実際、授乳婦にイミグランを投与して8時間後には乳汁中濃度が極めて低かったとの報告もあり使用後12時間をあけると安全です。
片頭痛患者の随伴症状として頭痛前後の肩こりや首の痛みがあり、誘発因子として月経、寝不足、天候、人混み、臭いなどがあります。特に細首、なで肩といった骨格筋肉系の障害が多く、職場でのパソコン使用や育児、家事に追われてエクササイズやリラクゼーションに時間をとりにくい忙しい女性特有の生活環境改善が必要です。
【周期性嘔吐症(自家中毒)】
周期性嘔吐症は、精神的ストレスや、風邪などの感染症に伴う食欲不振、睡眠不足などが引き金となり、反復性で強い嘔吐発作を繰り返す疾患です。5歳以上の小児の約2%に発症するといわれており、その多くは10歳ごろまでに症状が消失します。特徴として(1)嘔吐や悪心、腹痛。(2)夜間や早朝などに突然発症する発作性疾患で、発作の間欠期にはまったく正常。(3)過重なストレスの後に症状が現れる。(4)片頭痛の家族歴を持つ子が多く、本人も成人後に片頭痛に移行する確立が高い。という4点があげられます。腸の血管を拡張させ嘔吐や腹痛を引き起こす因子として、消化管粘膜に高濃度に存在する神経伝達物質セロトニンサージによる自律神経障害の関与が疑われており、成人の片頭痛の原因物質と共通です。
【腹部片頭痛】
日常的な活動を妨げるほどの重度の痛みで、腹痛とともに食欲不振、悪心、嘔吐(おうと)、顔面蒼白などをともなう片頭痛です。セロトニンが大量に分泌されることによって起こるセロトニン性頭痛の1つですが、子どもの場合、おへそ周りの腹痛が中心で、頭痛の症状があまりめだたないこともあります。
【小児良性発作性めまい】
前ぶれなく生じる回転性のめまい発作が特徴です。ぐるぐると回転している感覚に襲われますが、発作は数分から数時間で自然に治ります。めまいと同時に片側に拍動性の頭痛(ズキンズキンという痛み)がともなうことがあり、痛みは頭の位置をかえるとさらに強くなります。耳鼻科ではあまり知られていない病態ですが、このような症状で、学校を休んだり、保健室で休むようなことがあれば、頭痛専門医の診察が必要です。この症状は片頭痛のリスクとなるだけでなく、子どもの学校生活にも影響します。保護者が早めに気付いて対処してあげることが大切ですが、慢性化すると不登校になってしまう場合もあります。
いずれもクスリによる予防治療などで改善しますので小児頭痛外来を受診してください。